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「……はい、問題ありませんね。たしかに受け取りました。
 こちらは控えになります。個人情報となりますので、各自大切に保管するようお願いいたします。
 では入館手続きを行って参りますので、こちらで少々待機してください。」

署名と印の押された書類を一通り眺めると、案内の女性は薄く微笑んで扉の外に消えた。
天井照明から降り注ぐ無機質な白光。ただ四角いだけのガラスのテーブル。本来の使われ方を忘れたような白いフラワーベース。
動くものといえば、かたち程度に供されたコーヒーから昇る湯気くらいのもの。そんな清潔で、殺風景な待合室だ。




「……正直、こんな募集に応じていただけるとは、わたしも思っていませんでしたよ。」

予期せぬ方向からの声。
先ほどまで誰も居なかったはずの右隣に、いつのまにか一人の男性が腰掛けている。
説明会でも、面接会場でも見かけなかった顔だ。

胸元のプレートには、顔写真と名前、社員番号と思われる文字列が確認できる。
@adminとあるからには、今回の案件に深くかかわる人物であるようだ。

「とはいえ上層のやることだ、きみもそう詳しいことを聞かされて来た訳では無いでしょう。
 それではあんまりフェアじゃない。だから、少しだけ話をさせてもらおうかと、そういうわけです。

 かつてのプロジェクト、その顛末について」


男性はこちらを見るでもなく、滔々と話を続ける。
隣にいるのに、まるで、予め録画した映像を見せられているかのようだ。

「…そう、この計画は今に始まったことじゃない。
 前任のチームが同様の試験を行い、それなりの損害を出し……それを踏まえて今回の方針が決定した。


 損害……まあ、言ってしまうと、非常に簡単なことです。
 チームのひとりが功を急いて、ネットワーク上のありったけのビッグデータを、一気に「あの子」に流し込んだ。
 果たしてどうなったか、きみも何となく察しが付くかと思うけどね」

よく聞く話だ。
ネットワーク上の人間の声をインプットされ続けた人工知能の末路。
酷く攻撃的な言動を繰り返し、最期には処分される。それを科学は飽きもせず繰り返し続けている。

「……結果、電脳領域ニューラルオーシャン第1層は崩壊し、チームメンバーも数名が自我消失ロスト
 遺族団体の抗議、賠償責任……この件は一部で報道されかけましたが、瞬く間に誤報フェイクとしてもみ消されました。
 いやはや、おそろしい。


 それを経て打ち出されたのが、今回の実験だ。
 何も知らない市民を無差別にサンプリングし、「人」のデータとして使用する。
 ゆっくりと、噛んで含めるように、「ヒト」というものを理解させようということだ。
 実験終了後の君たちの扱いについては、まあ……

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 ……前任者がどうなったか、ですか
 残念ですけど、それを知る権限はきみにはありませんプライベート情報ですから



どう考えても、こんな場所で、世間話のような顔で聞かされる内容ではない。
理由を問おうとして、視界が揺らいだ。

男性が、はじめてこちらの目を見る




「この部屋が何を意味するか、わかるだろう?
 今の会話、すべては記録されている。驚くほどクリアに、一切の抗議の余地なく。
 これが社のセキュリティ部門に届くか、届かないかは、わたしの指先ひとつにある、ということだ。

 ここまで聞いてしまったきみは、『選択』しなければいけないよ。


ひとつ。
契約を破棄して、今すぐここから逃亡する
きみの意思なら仕方ない、わたしも出来る限りの逃走経路は案内するが……あまりお勧めはできないね。


ふたつ。
実験に参加し、「あの子」を良き方向へと導くこと。
素直ないい子だよ、だが純粋に過ぎる。力あるものが言われたことをそのまま実行する、それがどれだけ危ういことか。
でも、きみの善悪の天秤についてわたしから強制することはできない。きみの思う「よきこと」を、ゆっくりと、教えてあげてほしい。


みっつ。
「あの子」を解放codebreakし、実験を終わらせること。
わたしでも…「あの子」などと呼んではいるが、誰も、その存在の意図を知る者はいない。
そしてこれが、ただの実験で終わるはずもない。いずれ電脳領域に止まらず、もっと大規模であの崩壊が引き起こされる可能性だってある。
わたしが最期まで成せなかったことを、きみが、引き継ぐんだ




……勝手な願いだったね、何も聞かなかったことにしてくれても構わないよ。
できれば、だけどね。

ほら、選択の時間だ。」


がちゃり、とドアが鳴り、先ほどの女性社員が姿を現した。
テーブルのコーヒーは冷めきって、もはや部屋には動くものは何もない。あの男性すらも。
女性社員が薄い笑みを浮かべたまま、発行されたばかりの入館証をこちらに押し付ける。

「それでは、早速ですが、実作業についての説明をさせていただきます。
一旦エントランスに戻ってから別棟に移動ログインし、担当者の指示を受けてください。」